「どんつく祭」の伝え
「どんつく祭」の由来はさかのぼること2000年も前、弥生時代中期の頃。稲取の地に夫婦和合、子孫繁栄に家内安全、無病息災に商売繁盛の五徳を神に祈願していた云われだったそうです。
伝承によると、大昔に流行り病で尊い命が次々に失われていた時。疫病払いの儀式に使われていたのが男性性器を象ったもので、それを赤面と青面をつけたカラス天狗が村人たちに擦り付けてまわったとされています。
人間の厄を移し宿した御神体は山神社にて焼かれ、それにて厄払いとしていたとのこと。
また稲取にある雛つるしの祭りで有名な「素戔鳴(すさのお)神社」の祭りもひとつの起源。
その年に成人する男性が「お面さん」と呼ばれる天狗に扮して民家を巡るという儀礼で、赤色や青色の天狗面をかぶった新成人が男性器の形を模した棒を持ち、住民たちを突いて回るという地の風習。
突かれた人は「どんつく祭」でも掲げらている五徳が得られるとされていた儀礼だったようです。それら独特な風習が現代風の観光祭りとして受け継がれたのが稲取で毎年6月上旬に開催されちえる「どんつく祭」なのです。
御神体は必見!触ることも!
「どんつく祭」で神輿として担がれる男性のシンボル「御神体」は、普段は稲取の高台にある「どんつく神社」に奉納されています。
神社に行けば見物や撮影はできますが、触れることができるのは年に一度。祭りの日にだけ「どんつく神社」から会場に降り、直接手で触れ撫でながら、子孫繁栄、夫婦円満、商売繁盛、家内安全、無病息災の五徳を祈願することができるのです。
インパクト絶大な姿の「御神体」は、いくつかの種類があり、ひとつは「どんつく神社」に鎮座し、祭りでもメイン神輿として担がれているもの。長さは約2間とのことなので約3メートルで重さは1トンほど、神輿部分を入れると3トンほどにもなるそうです。
男性たちが威勢よく担ぐ大きな神に比べると、それはかわいらしいサイズの「御神体」もあり、こちらは女神輿として元気よく担がれます。
姿カタチが男性のシンボルそのままですが、夫婦が仲良くあれるようにとの願いや、子宝や安産といった女性の願いも込められているので恥ずかしがらずに取り巻いてみてくださいね。
特別な「新御神体」
また、この祭りでしか拝むことができない特別な「新御神体」があります。「どんつく祭」の50回記念に作られた、特大の男根。長さは4.2mメートルで直径80センチ、重さは2.2トン、材質はケヤキでできています。
神輿として担がれるものとは違い、こちらは会場を見守るかのごとく御神車に鎮座。まつりの時にしか登場しないので、その重厚感と貫禄ある姿を見て、触れてご利益にあやかれるのもこれが最後のチャンスかもしれませんね。
※以前はお神輿の「御神体」にまたがり乗るといった催しもありましたが、「御神体」はお御霊を入れてあるものであるため、どのサイズのものにも乗ることはできません。
おすすめ「どんつくグッズ」
お祭りの会場には、地元のフードワゴンや出店、B級グルメなど約30店舗が立ち並びます。大人向けな第一印象のお祭りですが、小さい子連れの家族や小中学生に高校生など、若い子たちもたくさん。
ぜひともお土産に選びたいのが「どんつく飴」。大胆な形のモチーフはご想像通りの『どんつく』です(笑)飴なので舐めるのがちょっぴり恥ずかしいと思いきや、他ではなかなか買えないので話題性も十分!「そろそろ子どもが欲しい」と考えているお友達へのお土産にもぴったりですよ
祭りの〆には「花火」も
「どんつく」の夫婦和合のイメージから、なんとなく「打ち上がる」という言葉も想像できますが、「どんつく祭」の最後には打ち上げ花火が開催されます。
この花火は伊豆稲取の「初夏の花火演舞」の一環として開催されるもので、場所は「サンライズテラス」です。
「どんつく祭り」一旦、終幕
先に紹介したように、伊豆稲取の「どんつく祭り」は歴史ある祭り。昔は大規模なエリアを使った神輿の練り歩きや、一般客も担ぐことができるなど、自由度の高さも魅力のひとつで、ピーク時には2日間の開催で宿泊者数6,000人を超えることもあるほど、話題性のある催しでした。
しかし、時代とともに安全性が問われるようになり、禁止事項が増え、従来の「どんつく祭り」のインパクトはカタチを変えざるおえず、型にはまるような規模となっていき……。
今年で53回目となる2018年の6月3日(日)で、祭りそのものを一区切りすることになったそうです。
来年以降は毎年開催してきた「どんつく神社」の神事だけは執り行う方向で検討されているようですが、「どんつく祭り」の時にだけお目見えしていた「御神体」や「新御神体」が、これまでのように見たり触れたりできるかというのは未定です。
終幕となる今年2018年6月3日の「どんつく祭り」は、最後のチャンスになるかもしれません。蛍も美しい時期ですので、ぜひこの機会に伊豆稲取への旅行を企画してみてはいかがでしょう。
最後に
冗談のようでありながらも、深い意味と長い歴史のある「どんつく祭り」。観光客目線では「一生懸命、真剣にはしゃぐ」といった印象の、とてもユニークな祭りで、かつては“わざわざ祭りの日を選んで稲取に行ってみたい”と感じる個性を有していたと思います。
今の時代もこれからも、「個性」とはかけがえのない宝です。他ではなかなかお目にかかれない個性的な「どんつく祭り」が、本来の姿で蘇り、再び伊豆稲取の地に復活することを祈るばかりです。