「とにかくさけんでにげるんだ」
「とにかくさけんでにげるんだ わるい人から身をまもる本」
ベティー・ボガホールド著(岩崎書店)
この本は、「実際にこんなことがあったとき、どうしたらいいのか」を子どもに分かりやすく伝えている絵本です。
ママや信頼できる大人がそばにいないときでも、自分で判断し身を守るための方法が書かれています。
カナダの小学校では、副読本としても取り入れられているそうですよ。
イラストは優しい水彩タッチ。わが家の子どもは、とくに怖がることもなく読んでいます。
知らない人から声をかけられたり、触られたりしてしまったとき。
誘拐未遂や性被害に遭ってしまったとき。
子どもたちはどうやって自分の身を守ればいいのでしょうか。
そこまで過激な表現はありませんが、普通の絵本よりは踏み込んだ内容になっていると感じます。実際、子どもにはそのくらい伝えないと、分からないかもしれません。
「とにかくさけんでにげる」のインパクト
この本は、このタイトルにすべてが集約されていると思います。
なにかあったとき、いやなことをされたとき。
「とにかくさけんでにげる」
このシンプルなことが、実際の場になると頭から抜けてしまってできない子も多いことでしょう。
それが、子どもに分かりやすく、すんなり頭の中にインプットできる言葉だと感じます。
本の中では、
・迷子になってしまった子
・同じマンションの住人とのトラブル
・知らない人の呼びかけに応じてしまった子
など、さまざまなパターンが出てきます。
そして最終的には「トラブルを子どもだけで解決して、よかったよかった」ではなく、信頼できる大人がいるのだということも教えてくれているのです。
「外にはこんな怖いことがある」だけではなく、安心できる場所、裏切られない場所があるという安心感を与えることも、大切なポイントの1つであるなと感じます。
「あとがき」こそ親は必読
あとがきには、著者であるベティー・ボガホールド氏の言葉が載っています。
それは、誘拐や性被害からどのように子どもを守るか、それをどのように教えるべきか、そして実際被害にあってしまったとき、どんな態度で接したらいいのかが記されています。
この本を翻訳した安藤由紀さんは、カナダで性的虐待を受けた人々のケアについて研修を受けているとき、この本と出会ったのだそう。
あとがきでは、「性被害は(略)誰もが知っているけれど、誰もがあえて語ろうとしなかったテーマです」と語られています。それは「子どもへの暴力が増えたから」ではなく、今までタブー視され、表に出すことができなかっただけということなのです。
安藤由紀さんは、子どもの性被害や人権に関わるワークショップなどを開催されていて、ノーベル平和賞にもノミネートされています。さまざまなことを考えさせられる「あとがき」も必読ですよ。
親が子どもを犯罪から守るために
確かに、自分自身もこうしたことを子どもに教えるとき、どこまで伝えるべきなのかということは、本を読むまで分かりませんでした。
子どもが巻き込まれる事件を目にすると、同じような年頃の子を持つ親は胸がしめつけられる思いがします。また、男の子だから大丈夫、という問題でもありません。
子どもを犯罪から守る知識を早くから得るために、絵本は有効だと思いますよ。
安藤由紀さんが関わられた本は、子どもの心をケアするものや、予防法についてサポートする内容のものがいくつかあります。
気になった方は、ぜひチェックしてみてくださいね。